やーいやーい、また新しいぶつぶつだ!
みんなうつるぞ、ほれ逃げろー!
何人かの男の子たちが揃えて声を上げると、
タタっと森の中へ一目散、一人の娘が駆けてきました。
「ううっ‥みんな私の顔を気味悪がっていじめてくる‥」
またううっといって 娘は 土の上に膝から崩れて泣き始めました。
娘の顔は、たいそう荒れていて、
きっと痒くて掻きむしったであろう場所が、ところどころ血が出ていて、それはそれは痛そうでした。
娘は、生まれつき 皮膚が乾燥しやすく、全身が荒れていました。
10を超えた頃から 特に顔の荒れがひどくなり、外にも出なくなりました。
みんな 娘をかわいそうな目で見たり、うつるかもしれぬと怯えた目で娘を見るからでした。
たまに母さんが風邪で寝込んでしまうと 買い物でどうしても外に出なければならず、
少し歩けば 先ほどのありさまです。
私が悪いんじゃないのに、と 口を噛み締めて 娘はいつも俯いていました。
ザザッザザッ
急に草が音を立てたと驚いて見てみると、すぐそばにリスがいました。
よく見ると、しっぽが蔓に絡まってしまったようでした。
動くほど複雑に絡んでいく様子をみて、娘は手を貸してやりました。
すぐにスルッと抜けて、リスは木の枝を駆け上っていきました。
見上げてその様子を見ていたその時、
ポツポツ、トトッ
娘の顔に 雨の雫のようなものが降ってきました。
娘は驚いてパッと顔を覆い 手で擦りました。
まわりを見渡すと雨ではないようで、なんだったのだろうと不思議に思いながらも、
娘は家の方へ帰っていきました。
家へ戻ってみると、ちょうど父さんも帰ってきたところのようで
娘は「おかえり」と言いました。
父さんが顔を見上げておかえり‥と言おうとして娘の顔を見た途端、
驚きのあまり、言葉をなくしてしまいました。
「・・・お、おまえ、その顔はどうしたんだ・・?」
また新しい吹き出物ができたのか、と思って 鏡を見ると、
なんと、あんなに顔いっぱいにできていた吹き出物が1つもなくなって
つるんと綺麗な頬になっているではありませんか。
「こ、これが私・・?」そうつぶやいた娘は、嬉しくて涙が出ました。
なぜこんな奇跡が起きたか娘にもわかりませんでしたが、それよりも嬉しくて幸せな気持ちがいっぱいになりました。
それからのこと。
吹き出物がなくなった娘の顔は、もとの整った顔立ちが輝き、たちまち村中の男たちの噂になりました。
噂をききつけた 村長が、あれよあれよという間に、 娘を自分の息子と結婚させ、幸せに暮らしました。