「いい景色だなぁ」
どこからともなく聞こえた声に、
青年は驚いて、持っていた瓶を落としそうになりました。
よく見ると、小さな小さな金のきのが瓶の口についていたのでした。
景色がよく見えるように上に持ち上げてやると、
金のきのこが、いつものエラそうな様子と違っていることに気づきました。
「青年、前のジャングルもよかったが、この国もいい国だなぁ。
菌たちが 穏やかで優しいものだから、こちらもなんだかすっかり
毒を抜かれたような気持ちになってね。
加えてこの景色さ。なんだか、この地球に降り立った時を思い出したよ。」
そう話し始めると、きのこはこんなことまで話してくれました。
君はここに祈りに来ただろう。
祈りというのは、今の幸せに感謝して、未来の幸せを願うことだね。
僕たち金のきのこの願いは、君たち人間の幸せでもある。
なんたって、地球のお医者さんだからさ。
この国は ずいぶんおじいさんおばあさんが多いようだね。
身体を悪くする人も少なくない。
若いのに気持ちが滅入っている人も多いじゃないか。
みんなに、この願いを届けられたらなぁ・・
最後に こう言うと、金のきのこは 涙を流しました。
それは、金色の露のようでした。
「あっ」
露がが落ちると同時に、 パッと金のきのこは消えてしまったのでした。
それでも青年には、金のきのこがどこかで笑っているのがわかりました。